CoCa's Wide Shut Update:01/09/02

Report #0


Intro
Text : CoCa
(構成:Kiev)
 私がJM氏と出逢ったのは、入社したばかりのCM音楽プロダクションの入口でのことだった。

 事務所のゴミを出して戻ってくると、クルクルの巻き毛こそ付けてないけれど、モーツァルトが生きてた時代の装束の人が確かに立っていたのだ(ホントは紺のタートルに紺のパンツの普通の格好だったのに、何故かそう見えた・・・)。
 軽く会釈をして事務所に戻る私。はて?疲れ過ぎているのだろうか?
 数十分後、事務所の鍵を閉め帰り支度をして出口まで来ると、モーツァルトさんが消えた代わりに、地下のスタジオからすんごいカッコイイ音楽が聞こえてきた。
 思わず丁稚新入社員兼電話番という立場も忘れて地下のスタジオに駆け下り、スタジオブースのドアを開け、上司のWプロデューサーに「見学させて下さい!」と言って、勝手にイスに座る私。
 今考えたら、何故そんな大胆なことが出来たのか不思議。だってその当時私は、自分の無力さを毎日思い知らされてメゲてた時期だったから。
 イスに座って顔を上げると、ん?あれ?この人さっき見たモーツァルトさん!!どうしてこんなところに? この“フロントガラス無しの車に乗って200km/hで爆走している”みたいな音楽を作ったのは、この人なの?意外!!
 その時JM氏は、CMで作った曲をリミックスして、ライヴに使うための作業をしていたのだった。

 ところで少し経つと、JM氏がWプロデューサーに、ずーっと敬語で話しているのがものすごく気になった(ちなみにWプロデューサーは、JM氏より年下です)。
 「なんて冷た気な話し方をする人なんだろう・・・」
 だってJM氏が使っていたのは、敬意を表するというよりも、人を近づけない為に使っているような敬語だったから。
 (後で判ったことだが、JM氏は誰にでもそーいう話し方をするのだ。子供時代のトラウマのせいだと、後に私こと心理学者CoCaは見るのだが・・・)
 ちなみにWプロデューサーついてJM氏に取材してみると、「クライアントと関係なく自分の意見を言ってくれる愛のある仕事をする人!」と非常に好意と信頼を寄せているのだった(実は私もWプロデューサーの大ファン!)
 録音が終わると、モーツァルトさんは私の方を向いて、
 「これはライヴで流すためのものなんです。もし、お暇でしたら聴きに来て下さいね」
そう言ってエレガントに笑った。
 (ゲッ!エレガントに笑ってるよー。ナニこの人!)
 「はい!ありがとうございます!ぜひ伺いたいです!」
と、こちらもエレガントぶってはみたものの、付け焼き刃では対抗できず自爆・・・。
 後に訊いた話だが、私はJM氏に警戒マーキングされていたらしい。
 何故なら、ある打ち合わせの席にお茶を運んで来た私が、なーんにも無いところでつまずき、代理店の人だか監督だかに、そのお茶を思いっきり肩から背中にかけてダイナミックにひっかけたのを2回続けて見たからなのだそうだ、やば。“このプロダクションの、あの粗忽者には間違っても接近禁止・・・”と思っていたらしい。うぎょー! 

 録音が終わると、スタッフ全員食事に誘われた(私もおまけ!)。
 「さて、時間も遅いし、どこに行きましょうか?」とWプロデューサー。
 「うちの近くに開いてる店がありますよ」とJM氏。そう言うなり私の方に振り向いて、
 「水族館みたいな所と、学食みたいな所、どちらがいいですか?」と私に訊いてきた。
 「は?」
 「魚がいる所は、綺麗だけど食べ物の種類が少なくて、学食は学食みたいなんです。どっちがいいですか?」
 「ん〜ん〜っと水族館!・・・にしましょうか?ねぇ?」
 「でも、そこは食べ物が少ないんですよ?」と、判ってないナこいつ!って顔を覗かせるJM氏。
 「じゃあ、学食でお願いします・・・(それなら最初から学食に行きますよって言ってくれればいいじゃん)」
 私が相当“腹減り顔”をしていたのか・・・結局みんなで学食のような食べ物を出すbarへ。
 その後、JM氏の家へ移動。
 ドアを開けると、なーんにもなくて、広ーくて、大きな植物がドーンと置いてある。ぎょぎょっ!そして、外国みたいな香り。
 すごい!こんなに遅い時間に、こんなに大勢で来たのに、お酒は何でもあるって言うし、おつまみだって、各種チーズに、韓国海苔、チップスも手作りみたいなディップもいっぱい!
 奥さんはお洒落で、お人形さんみたいに整った顔!何か夢みたい!リカちゃんハウスみたい!外国みた〜い!
 翌朝、同居していた姉に、
 「あのさ、JMさんて人の家に昨日行ったの。そしたら、木が生えてて、リカちゃんハウスみたいで、カクカク、シカジカ、今度ライヴがあるんだって。曲がカッコイイんだあ。JMさんて人、見た目はモーツァルトの時代の人みたいなんだよ」
と思わず報告。

 数日後、Wプロデューサー宛にライヴのチケットがJM氏から送られてきた。
 Wプロデューサーは仕事で行けなくなってしまったので、私はWプロデューサーの分も頂いちゃって、姉と2人で出かけることにした。場所は六本木エンドマックス。
 「バンドの人、何かヤバそうな人ばっかりじゃない?」と姉。
 「う、うん」
 曲が始まる。
 「あっ!この曲だよ、MIXしてたの。すっごくカッコいいでしょ」
 ・・・とそこへ、ゲイっぽいお兄さんがメガホンで唄い始めた(後にジミーさんと判明)。
 「この人達、絶対やばいヨ!すぐ帰ろ!」と尻込む姉。私生活はワイルドなくせに外敵に弱いってわけ?
 ・・・ということで、たったの一曲で私は泣く泣く退却させられたのだった。

 そのまま時は流れた。私は電話番や雑用の他に、DEMO用の唄も唄うようになった。それが本番でも使われるようになったけど、原因不明の咳が止まらなくなったり、体調も変になっちゃって、自分と社会の時差に頭を抱える毎日。
 このまま会社にいても迷惑をかけるだけだし・・・と私は会社を辞めてしまっちゃった。しょべー。
 後日、何とか体も治り、今までCMで唄った唄をカセットに入れてCM音楽プロダクションと作曲家の人たちに送ることに。そう!ここでまたJM氏に繋がってくるのだ!

 数ヶ月後、JM氏から電話が・・・。
 「今度、僕の友達の画家がCG作品を作るので、その中でおしゃべりをして欲しいんです」
 それが、『angels rondo』の「珠」という曲に収録されているナレーション(その後、私を抜いた形で「アジサイ」に・・・)。何とナレーター・デビューしちゃったの。トロさも意外と役に立つね・・・。 
 ナレーション録音の待ち時間に、何気なく
 「私、DATプレーヤーを貰ったんですけど、聴く物ないし、困ってるんです。何で貰っちゃったんでしょう」
と漏らしたら、数日後『永遠乃掌』がDATに録音されて送られて来た。
 「これ、DATのテープだ!なんで憶えてるワケ?宇宙人みたい!」
 ここまでやられたら、DATを使わないわけにはいくまい!恐る恐るコンセントを入れ、テープを入れ、ヘッドフォンで聴いてみると・・・。
 「ひょええええええええ!すっごーい!」
 『バック・トゥー・ザ・フューチャー』に出てくる、空飛ぶサーフボードにでも乗ったみたい。人と人、ビルとビルの間をシュシュッとかき分けて、時間だって飛び越えちゃう。でも聴き終わった時には、消滅した星達の思い出を繋げた8mmテープを見たかの様な気持ちになる。切ない・・・。
 それから毎日、『永遠乃掌』をヘッドフォンで聴く。音楽って絵が見えるものなのね。楽し〜!!やっぱりJMさんは、体型からしても人間じゃないのかも・・・。
 まあ、それはさておき、「ありがとうございました」とお礼の電話をする私。姉が横から凄い顔で睨んでいる。エンドマックスでのライヴの妖気を警戒しているのだ。私って箱入り?フッフッフ・・・(笑)。

 しばらくして、JM氏から唄の仕事を頂いた。私は学習の為にオケを録るところから見学させてもらう事にしたのだが・・・それがもう驚き!
 主要メンバーが揃うと、録音の準備が出来るまでの間、挨拶変わりに自然とジャムセッションが始まる。
 シェー!何これ!こ、これが真のミュージシャンというもの?? ここまで出来て初めてプロって事? まるで秘密結社のように入り込めない雰囲気・・・。
 コントロール・ルームにいたJM氏も、刀を抜くかのようにラッパを抱えてセッション・ブースヘ。
 JM氏が乱入すると、そこはもうコロシアム! 自分の楽器を武器に容赦なく斬り込んでくる。
 「真剣」はもちろん、「手裏剣」、「手榴弾」、「酔拳みたいなフェイント」、「イッちゃう人」、「ポーズの人」、「まさか・・・な人物」。つまり、「何だこりゃ!」みたいなのをキメちゃった人が勝ち、の超フリースタイル!
 私も仲間に入れて欲しい!感覚一発勝負の世界の住人になりたい!!
 そして遂に「それじゃ、やってみましょうか?」との声!(ギャー!この人達のすぐ後で〜?助けてくれ〜!)
 勇気を絞り出し、何とか声を出す。すると、
 「少しケチってませんか? もっとマザー・テレサみたいに光と愛に溢れた人になって下さいね。“ドドドー”って出る感じにして下さーい!」
 そして「もっと出して!ケチ!ウソつき!」などと言いながら、段々ズズズとイスに沈んでいくJM氏。楽器の人を録る時まではあんなに楽しそうな顔してたのに・・・トホホ。私ってつまらない人間だったのね・・・。
 その時初めて、嘘のない鏡で自分の姿を見た感じ。もう唄えないよー!人生最大級の落ち込み・・・それ以来、唄を唄っているなんて大きな声では言えなくなってしまった。
 形で見せることが出来て初めて、形にしたい事があると言えるのだと、遅まきながら気が付いた。あ〜、そんなこと今になって気が付くなんて・・・私ってやっぱりアホだったのねー。

 またまたツルツルっと時は流れ、1995年12月。
 CMのお仕事でまたまた偶然JM氏にお会いして、数日後に開かれる恒例の自宅開放クリスマスパーティーのお誘いを受ける。
 モーツァルト+宇宙人+コロシアムの戦士+妖気が漂うライヴの中心人物。それなのに、リカちゃんハウスの主・・・。その人がどんな人脈を持っているのか興味ありますっ。ということで行ってみました。
 パーティーは人だらけ。それも一癖がありそうな人ばかり。私、場違いじゃな〜い?
 とりあえず家の中を歩き回って観察。すると、小さくて可愛い女の子が私にめちゃめちゃ素直な笑顔を投げかけてきた。それは、以前お邪魔した時にはもう寝ちゃってて逢う機会の無かった、JM氏の愛娘S嬢だったのだ。
 パーティーの間中、S嬢と遊びまくる。控えめなノリの良さ!頚の香りもいいわー。くーっ!
 この日JM氏より、父子家庭になってしまったと訊かされる。うわ〜そうなんだ、ショック! 代官山のオアシス、リカちゃんハウスの崩壊。世紀末近しって感じ・・・。

 数日後、スラヴァという歌い手のコンサートで、傍らに小さくて可愛いS嬢を従えたJM氏とまたまた会っちゃった!マジ!
 そしたら、「パーティーの日は、沢山遊んでもらったみたいでありがと! お暇な日は、うちに来てこの子の遊び相手になって頂けないでしょうか?」なんて頼まれる。
 (暇な日って?いつも暇なんですけど・・・)
 その顔にはいつもの強さはなく、ちょっと影が入っていた(・・・面白い)。リカちゃんがいなくなった後のリカちゃんハウス・・・健気に微笑むS嬢・・・(T T)。私、何だかウルトラマンのような、モモレンジャーのような気になってきちゃった。
 で、JM氏宅に出入りする事について、前向きに考えてみる。
 お断りする理由があるとすれば、私がお年頃だってこと。へへへ。今はまだ結婚願望も無いし、デートだって毎日じゃないし・・・(なんちゃって!)
 まあとにかく、このリカちゃんが去った後のリカちゃんハウスに潜入してみたい理由を並べてみる。

1. S嬢と遊べる(かわいがりたい!)。
2. S嬢の香りが嗅げる(私は子供の頚の臭いが大好き!)。
3. 防音室を借りられる(唄もピアノも出来ちゃう、かも?)。
4. ご飯を食べる仲間が出来る(JM氏の料理は超旨いことが後日判明!)。
5. あの音楽が創られる現場を盗み見られる。・・・ということは、JM氏が本当は何者なのか判るかも(鶴の恩返しの旦那か)

 よし、決めた!・・・という風にして、私は毎日赤いバスに乗り、通い潜入隊員として、元リカちゃんハウスで遊ばせて頂いているのであります。

 ・・・というのは、仮の姿・・・。
 実は私、「唄でJM氏から一本取る!」という堅い決意を持つスパイ?なのです!(うそお〜!!)



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