CoCa's Wide Shut Update:01/09/16

▼ Report #2


イノセント・ボッサ 日本編 その2)〜ヴィニシウス野放し
Text&Photo : CoCa
(構成:Kiev)

その1)

良い知らせ〜アート・リンゼイ(2)
 予算が無いことを知っても、アートは「いいから創ろうぜ!」と言ってくれた。
 そして、ものすごく良い知らせが!!!

 アートが河口湖のイベントに出る為に日本に来るという!
 しかも、ギターのヴィニシウス・カントゥアーリアも一緒にやって来て、ギターは勿論のこと、パーカッションも演奏してくれるそうだ。やった!これで日本に居ながらにして、本物が録れる!!
 7/31〜8/2の3日間!それは正にボサノバの神様からの贈り物!暗礁に乗り上げていた『イノセント・ボッサ』に、グッと追い風が吹いて来た!
 おまけに、イベントにくっつけて来てくれるおかげで、飛行機はビジネスと決めているアートの飛行機代が浮いちゃう。だから、その分音楽にお金がかけられる!
 アートの常宿が決まっているという事を訊いてビビッたけど、アメックスの割引券をみると、何とそこにそのホテルの名前も・・・。やった!
 すかさず電話。7/31からの3日間、空きがあるという。やったー!
 しかも、割引券よりもっと安いプランが朝食付きであるってさ。やったーー!
 すぐに2部屋押さえる!

うれしいけど、不安

 何故不安か?
 それは2人とも楽譜が読めない。コード譜も読めない。3日間でどこまで録れるのか? 絶対時間足りないよ!
 でもやるしかない!!アートの時間はそこしか無いし、NYにも、ブラジルにも行く予算は無いのだ!がんばれJM氏!“心意気を貫こうぜ!”


良い知らせ〜高橋さん(2)
 コンシピオの高橋さんが、またまた力を貸してくれた。
 スタジオを自分の所のアーティスト値段で、ものすごく安く貸してくれて、すぐにその3日間を押さえてくれた。やったー!
 そして、更に、もっとものすごいことが高橋さんの口から飛び出してきた。
 「マスタリング料は制作費とは別枠なんだよ。だからそれは心配しなくてもいいよ」
 「へ?そそそそうなんですか?本当に?やっっったー!」と喜びに震えるJM氏。
 制作会社と販売会社が違うとそうなれるんだ!
 正に天の声!吹け吹け追い風! だって、これでNYでアートと一緒に仕上げることが出来るじゃん。
 すごいよ!すごいよ!JM氏は高橋さんが帰った後、嬉しくてまるでカジモドのように、何度も飛び跳ねた。S嬢と私は思わず相撲取った!だって、じっとしていられないくらい嬉しかったんだもん!


そして、遂にその日がやってきた!
 アートは、すごく背が高くて、金魚のTシャツを着て下はジーパン、そしてジーパンのお尻の部分にはお尻らしきものが入っていない。まるで、失敗したシュークリーム。
 ヴィニシウスの背丈は普通。顔は岩みたいに固まっている。コワーイ!足にはギリシャ人みたいなサンダル。アマゾン生まれだという。ワニなんじゃないの?
 (※カンバセーションの前田さんが、河口湖のイベントの後、アートとヴィニシウスを連れてきて下さって、その他にもいろいろとご協力して下さいました。ピース!)

ヴィニシウス野放し

 ヴィニシウスはスタジオに着くと、カップにたっぷりとコーヒーを注ぎ、すぐにギターを抱えて弾き始めた。みんなと初めましての挨拶をしながらも、ズーッと弾いている。そして一通り挨拶が終わると、少しも待っていられないという感じでJM氏をピアノブースに連れ込み、自分がコードを押さえられるようになるまで、ピアノを弾かせ続ける。
(Photo[1]

 ヴィニシウスは、殆どどこが“ド”か分からないっていうか気にしてないから(?)、音を探すのに時間がかかる。ちょっと迷惑・・・? でも、その作業が終わってからが凄いのだ!
 メロディーを唄いながら、コードが押さえられる様になると今度は自分が気持ちいい様にコードを転回させていく。ヴィニシウスの体を一回転して出てくるJM氏の音楽は、ブラジリアンのスピリットをスポンジみたいに吸い込んで、またJM氏の元に戻ってくる。音楽だけの会話。2人だけ異次元に行っちゃった感じ。
(Photo[2]

 すっかり音を覚えると、ヴィニシウスはまるでお尻に火がついたみたいに「録ろう!忘れないうちに!早く早く!」と急かす。そしてすぐに録音。毎曲その繰り返し。3日間その繰り返し。
 パーカッションの方は、いつも一発OK!メチャメチャリズム感いい! 何でも、ギタリストになる前はカエターノ・ヴェローゾの所でドラム叩いてたんだって!そっりゃー凄い訳だ・・・。
 1つのリズムだけじゃなくて、裏の裏々のリズムまで取りながら弾いているから、すごい気持ちいい。腕のいい指圧師の様。「あ〜そこそこ!何で判るんですか?」状態。
(Photo[3]

 でも一番驚いたのは、ギターもパーカッションも、「嘘でしょ?」って程小さい音でしか弾かない事。真夜中にワンルームマンションで弾いてるんじゃないんだからさ・・・て感じ。
 最初は、「え?小っちゃくない?マジ?」って思ったけれど、録音を進めていくうちに、だからここまで繊細なニュアンスが出せるんだと分かって納得!
 それから、1日中休まずに演奏しているのに、音が鳴ると黙っていられない所にもびっくり。だって、コントロールルームに戻ってきても、手を擦ってみたり、机を叩いたり、唄を歌ったりする。スルドもパンデーロもカイシャもTシャツも灰皿もゴミ箱も化けの皮も(?)叩けるものは何でも、どこの角度からでも叩く。その裏の拍子を取るために、口を“チュンチュン”言わせる。その“チュンチュン”まで、乱れません! 叩く物が見つかった時の嬉しそうな顔ったら、マイケル・ジョーダンからボールをもぎ取ったかの様だぜ!彼の音楽への入り込み方は、まるで忠犬ハチ公みたい。
(Photo[4]

 でも、そんなに演奏するのが好きなくせに、彼はすぐ「Pro Tools使おう!ループにしよう!」と言うの。不思議なことに、一番のメカ好きでもあるのでした。
(Photo[5]

JM氏 なまりにやられる

 本場モンだけに、一緒に演ってみると泣かされることもあった。
 ブラジル特有の音楽的な“なまり&もたり”に。
 まだ唄が入っていないから、JM氏はヴィニシウスのギターと同時にピアノでメロディーを弾いたのだけれど、彼はいつもクリックより少しゆっくり、なまって弾くから、JM氏は困った。曲頭から2人で出る時なんて、頭を抱えた。ヴィニシウスはどんな曲でも、正確にホンのちょっと遅れて入ってくる。そのゆっくりに合わせてクリックをずらすと、またそれに合わせて、正確に遅れるのだ。
 「え〜ん!(涙) タイミングが読めん!」 クリックさえ聞かなければOKなのに、そうも行かないところが悔しい。
 「プレイバックでは反則のヴィニシウスの方が、ゆったり聞こえちゃうな〜。でも、これが本場のボサノバなんだ」 JM氏は自分に言い聞かせるが、かなり悔しそう・・・。
(Photo[6]

 帰ってからジョビンのCDを聴いて、「この人もリズムのとり方速くない?」 なんてボサノバの神様まで引っ張り込んじゃったりして、自分を勇気づけていたもんね(バラしてごめんね、JMさん)。
 しかし、そこはさすがプロ! 翌日には、反則OKな感じがJM氏にもインプットされて、ヴィニシウスよりもなまっちゃってました?

感動的なリスナー

 アートは2人を見守るお兄ちゃんの様に、練習の間、ピアノに寄りかかり、相談に乗ったり、唄ってみたり、リズムを刻んだり。またある時はみそっかすの弟のように真剣に観察したり、ジーッと2人を見つめている。
(Photo[7]
 いざ本番になると、コントロールルームの一番前を陣取り、立ち上がって踊ったり、コーヒーの香りを嗅ぐみたいに音楽を深〜く吸い込んでいた。
 深く頷いたかと思うと、胸を押さえて音楽に打たれちゃったようにグーッと石みたいに動かなくなったり、またある時は音楽を肴に旨そうに煙草をふかす。そうかと思うと、バラエティーショーを見ているかの様に、立ち上がって手を叩きながらゲラゲラとか、フホフホ笑ったりする。
 アートには、音の波動がまるで映像の様に見えてるみたい。
(Photo[8]


「As Tears Go By」前編
(序曲)
 今回、一曲だけJM氏以外の曲が入っている。ミック・ジャガーがマリアンヌ・フェイスフルに捧げたあの名曲「As Tears Go By」だ。
 JM氏はこの曲が、大・大・大好き!(もちろんマリアンヌ・フェイスフルもメチャメチャ好き!)。
 でも、もしあの名曲を、アートのあの声で、ギター1本で唄ったら・・・って思い付いた途端に頭の中に、完成型がバッチリ聞こえてきたらしい。またまた嬉しくなっちゃったJM氏は、またまたカジモドの様に部屋中飛び回った。やっぱ人間じゃないかも・・・。
 ということが、あったのです。
(序曲終わり)

 録音2日目、ヴィニシウスのギターの調子がおかしくなった(日本の気候のせいらしい・・・)。YAMAHAの方が、ヴィニシウスが気に入るギターを浜松から取り寄せてくれる事にはなったんだけど、何せ時間勝負の録音なのでJM氏はすごく困った。
 「今、何だったら出来そう?」
 ヴィニシウスが「“As tears go by”なら何とか弾けるかも」と言う。
 「やった!録ろう録ろう!」 喜ぶJM氏。
 しかし、ここで問題発生!歌詞カードの無いことに気が付く一同。何だよ・・・せっかくなのに・・・。
 「そうだ!ネットで探してみよう!」と、早速コンシピオのオフィスに行きネットで検索してみるが見つからず。不機嫌になるJM氏。
 そんなJM氏の姿を見て、アシスタントの功刀君が知り合いのミュージシャンの男の子H君に連絡を取ってくれた。今彼女とデート中らしい。でも、恵比寿のTSUTAYAにいるから、マリアンヌ・フェイスフルのCDを借りて歌詞をコピーして、コンビニから送ってくれるという!
 ひゃっほー!!!すごいチームワーク!

 JM氏が思った通り、アートの唄は「頼むからもうやめてくれ!」って言うくらい、切なくてかわいくて最高!!
 アート天才! ヴィニシウス、ナイス!! アリガトウJM氏!!!私の覗くビデオカメラの窓には涙が・・・。汚れた鱗が落ちて行くぅぅぅー!
(Photo[9]

 でもアートは唄った後、ピッチの事をとても気にしていて・・・。
 「いいの、いいの。もうハートにガンガン来ちゃってるんだから・・・ピッチなんか全然気になんないよお」 ってJM氏は言ったんだけど、やっぱりすごく気にしていた。
 それがまたまた、大事件に発展するのだけど、それはまた後のお話・・・。

See You Soon ヴィニシウス!

 ・・・と言うことで、ヴィニシウス・カントゥアーリアの録音は終了。
 彼は、初日にJM氏をピアノブースに連れ込んだ時から、何度も何度も、
 「お前の曲の中にはジョビンがいる。一緒にライヴしよう。ツアーに行こう!」 と言ってたという。帰っていく時にも抱きついて同じ事を言ってくれたらしい。 
 音楽の為だけに生きているような人にそう言われたJM氏の嬉しそうな顔を見ていたら、ちょっぴり泣けた。ああ〜今度は男に生まれたいねえ〜。
(Photo[10]

Thanks!アート・リンゼイさん

 アートは旅が多いから、体が時差でおかしくならないように、外国へ行ったら10日間は停泊するようにしているんだって。で、その後も結局色々付き合ってくれちゃいました。ボーナスです!
(Photo[11]

お次は「その3)」、日本勢のオーバーダブ&ボーイソプラノのZeno君のお話でーす。


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