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「イノセント・ボッサ 日本編 その1)〜JM氏 大いに悩む」 |
Text&Photo : CoCa
(構成:Kiev) |
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●こんな会議があったのだ!
「エキゾチカ」「エロチカ」と“自分が魅了されるテーマ”に絞ったアルバムを立て続けに創ったJM氏。「もういっちょ行こーぜ!」って感じの企画会議がありました。
JM氏が提案したNEWテーマは、「イノセント」。
無垢なものに触れるたびに、いつもキューンと切ない感動を覚えるからなんだそうです。これにはみんなパチパチで一発OK!
さて、具体的にどうしようかという話になった時、BEAMS代表の設楽さんからこんな意見が・・・。
「イノセントっていうと、僕はボサノバなんだなあ。イノセントなボサノバ、聴きたいですねえ」
どうも彼の中ではイノセンスとボサノバが深く結びついた関係にあるらしい・・・面白いわぁ。
「なるほど。『ゲッツ/ジルベルト』なんて僕も青春の1枚なので、お気持ちは解ります」
と、エレガントな微笑みを浮かべるJM氏。
が、人差し指で顎をツンツンするポーズ。それは難問をかわす策を練る時の彼の癖。
(何がJM氏をそんなに悩ませているの?)
その後もボサノバ一直線で進んでいる企画会議の軌道修正をすべく、いろんな角度から攻めてみるJM氏。しかし、設楽さんの思い入れは強く、ボッサに決定な雰囲気・・・。
今日はこれ以上攻めても無駄だと踏んだのか?
「まあとにかく、学習して損は無し。やれるだけはやってみましょう」
と、JM氏は場を納めたのであった。
会議の後に訊きました。
Q. 「どうしてボサノバはダメなんですか?」
A. 「何故なら、ボサノバが生まれてもう40年近く。既に現地では懐メロ的存在、世界中で形を変えて大スタンダード。そして今やクラブシーンでもボッサ風味は定番。立体混血音楽を生むことに命を懸けてきた僕に何をやれっての?ボサノバだって混血児だけどさ、それを直球で、しかも付け焼き刃でやることはないんじゃないの?」
・・・と言うことでした。私はJM氏から出てくるものなら何だって聴きたいけどなあ〜。
★JM氏 大いに悩む
まず巨匠は置いといて、ボサノバの世界をより深く探る為、JM氏は中原仁編の「ブラジリアン・ミュージック」という本を広げ、歌手をチェック!山ほどCDを買い込んで聴きまくった(その後、中原さんも歌手探しを手伝ってくれることに)。
しかし、JM氏のイノセントモードに引っかかる人はそう簡単には見つからず。シコ・ブアルキの「パラチチ〜」な感じに、アンテナがピクピクしたJM氏だったが、今回の企画にはちょっと違い過ぎる。一緒にやってみたいのに残念!
在ブラジルの知り合いマルコさんやモニカさんにもメールで情報を頂いたけれど、収穫は無し。
「う〜ん・・・やっぱりジョアン・ジルベルトほど、イノセントな声の人はいないのかなあ?それにアントニオ・カルロス・ジョビンの曲に迫るような綺麗なメロディーなんて、まだこの世にあるのだろうか?」
と頭を抱えたまま、来る日も来る日もピアノに向かうJM氏であった。
●絶対条件!
JM氏がイノセントなボサノバを作るにあたり、絶対欲しいのは「おじいさん」+「声変わり前の少年」のヴォーカリストであった。しかも、全編ネイティブなポルトガル語で唄うべし!
「男は歳を取ると、また少年に戻るんだよね」
JM氏は、私から目を反らしながらそう言った。
(確かに、女は一度大人になったら少女には戻れないけど、ムカツク!)
ちょうど、ジョアン・ジルベルトのギターと唄だけの新譜が出て、これが何とも「イノセントの極み」みたいな素晴らしい作品!
「どうして、母国語なのにこんなにピュアで覚えたての言葉みたいに唄えるんだろう・・・。いいなあ〜。こういう人、他にいないかなあ。いるわけないよな。いないからすごいんだよな・・・」
と言いながら、溜息をつくJM氏。
・・・さて、問題は山積みであったが、ボサノバの学習を続けつつJM氏は9曲の新曲を書き上げた(ええ?いつの間に?)。
そしてBEAMSの設楽さんを家に招き、学習の成果を伝える(テーブルの上には、歌手探しの為に使った本、雑誌、CDの山が・・・)。
「曲は書いてみましたけど・・・これより先に進むのが、かなり大変そうなんです(^^;。何処に出しても恥ずかしくない本物を目指せ、っていうことでブラジルの歌手を散々聴いてみましたけど、ジョアン・ジルベルト以外に「イノセント」に引っかかる人がいませんでした。彼は大スターな上に奇行で知られてるから現実的じゃないし。この際、ブラジルに行って歌手探しから始めないと作れないんじゃないでしょうか?
たくさん人に会って、山ほどライヴを観て・・・これはかなりの賭けになりますよねー。ボーイソプラノの子を捜し出すのは更に難しいと思われます。バイーヤまで行けば、居るかも知れないという情報はあるんですけど・・・。あと、ボサノバのグルーヴはやはり現地人じゃないと出せないので、打楽器のトラックを録るには、ブラジルかNYに行かないと無理だと思います」
JM氏はボサノバ路線に最後の抵抗を見せた。
が、それでも設楽さんのイノセントなボッサが聴きたいという気持ちは堅い。
遂にJM氏は覚悟を決め、デモテープの仕上げに取りかかった。
曲の形がはっきり見えて来るに連れて、JM氏はパートナーの必要性を強く感じ始めた。
何十年聴いても飽きない、立派な混血児(=JM氏の音楽)を世に生み落とす為には、生きたブラジルの血や、ブラジルのスピリットが必要なのだ(吸血鬼JM!)。
そんなある日・・・。
「そうだ!今回はアートだ!アートしかいないじゃないか!あんなに超イノセントで危ない奴を忘れちゃいけないぜ!」
JM氏が自信に満ちた言葉を発したその時、まるで「フランダースの犬」の主人公ネロが天国に召されて行く時みたいに、その頭上には光の柱が降りていましたのよ(ピカー!)。
●良い知らせ〜アート・リンゼイ(1)
・・・となったらすぐ行動!久し振りに友達のアート・リンゼイに電話をかけてみるJM氏。
「もしもしアート?(挨拶省略)今何故かボサノバのCD作ってるんだけど、歌詞を書いてもらえないかなー!?
それから、イノセントに唄えるおじいさんと、ボーイソプラノの子も探してるんだけど、誰か知らない?」
「ジョアン・ドナートがいいんじゃないかな(出た!ジルベルトと並び称される奇人!)。危険なくらいイノセントだよ。歳も充分じいさんだし。子供は難しそうだな・・・。バイーヤまで行けば何とかいるかもしれないけど」
とアドバイスしてくれるアート。
更に「契約上問題なければ、もちろんアートにも唄ってもらいたいんだけど・・・」という依頼にも「いいよ!」と快諾してくれた!
早速、アートのマネージャーのスティーブ宛にCD-Rを送る。
が、何日経っても、アートからは何の返事も帰ってこない。スティーブもアートと連絡が取れていないという。頼むぜアート・・・。
その後だんだん分かってきたんだけど、アートってほとんど家にいないみたいなの。
ヨーロッパツアーだったり、LAのニッティング・ファクトリーのオープニング・アクトしてたり、ブラジルのカーニバルで遊んでたり、イタリアにバカンスで行方不明だったり・・・NYでも朝出たら夜中までほとんど戻らないんだって。
この時にはまだメールもやってなかったし、連絡を取るのは本当に大変!
数週間後、ようやくアートからの電話が・・・。
「Hi、Ju〜n!フホフホフホ(この音はアート特有の笑い)。CD聴いたよ。いい曲いっぱい書いたねえ。X曲目とX曲目がすごく好きだったよ。X番目の曲はこういう感じがして、こういう詞を書きたいんだけど、どうかな?
それとX曲目とX曲目に試してみたいアイデアがあるんだけど、やってみていい? 歌詞は全部書くし、唄も唄うよ」
と、いきなり具体的な話が次々出てきた。
電話を切ったJM氏はえらく興奮している。
「すごいよ。やっぱりアートはいいよ。ミュージシャンの会話ってこうだよな。音を聴いただけで判っちゃうから、余計なこと言う必要がないもんね。話が早いや!」
強力な助っ人をゲットしたJM氏。よし!これでいいのが作れるぞ!!とJM氏、ここで本気のボサノバ・モードになる!
●JM氏 一度死ぬ
やっとエンジン全開になったのも束の間、ボサノバの神様はもう少し、JM氏の心意気をお試しになりたかったらしく、突如波乱が!
(※危険な情報のためR指定、ここには書けませーん。ちぇ! どうしても読みたいという方は、「完全版」の入手法を管理人までお問い合わせ下さい)
●良い知らせ〜高橋さん(1)
そんなある日のこと。素晴らしい話が舞い込んできた。
JM氏の昔からの知り合いであるコンシピオレコードの高橋さんが、かつてSwitchレーベルから出ていた『永遠乃掌』('88)をもう一度出したいと言ってくれたのだ。
「あの時は早過ぎたけど、今なら結構いけると思ってネ」
「わー!本当ですか?やったあ!!」
「ついでだからさ、『星ノ玉ノ緒』('93)も、もう一度出せるように動いてみるよ。ちょ〜っと難しいかもしれないけど」
しかし、高橋さんはやってくれた。『星ノ玉ノ緒』も再発のOKをもらってくれたのだ!(もう高橋さん天才!!)
「じゃあ、せっかくだから、BEAMSの今までの2枚と、今から作るの入れて、5枚まとめられたらボリューム出ていいよねー」(もう高橋さん神様!!)
「いいんですか!良かった〜。僕、ホントに困ってたんですよ〜」
高橋さんとタッグを組んでこれからCDを進めて行けることで元気を取り戻したJM氏。初雪に喜ぶ犬の様です。
こうして、正式にこのレコードの販売を、高橋さん&コンシピオレコードの皆さんが、引き受けて下さるようになったのだ(ヒャッホ!)。
★JM氏 予算管理人になる
R指定な理由により(笑)、今回の予算は前作よりかなり削減(この物要りな企画でなぜー??)。
その代わり、「好きなように使ってください!」と、JM氏が予算管理も引き受けることになりました。これはラッキーなように聞こえますが、実は大変な事!
何と完璧主義のJM氏は、アーティストとプロデューサーに加え、自ら予算管理にも身を捧げ始めた。
毎日毎晩、Mac G3とにらめっこしながら予算を立てるJM氏。どこを削るか。ここは絶対に譲れない。ここは交渉しなくちゃ。
JM氏の神経が、どんどん削られて行くのを間近に見ていると、録音の日までちゃんと持つのか心配・・・何か怖いよ〜!
●良い知らせ〜アート・リンゼイ(2)
予算が無いことを知っても、アートは「いいから創ろうぜ!」と言ってくれた。
そして・・・ものすごく良い知らせが!!!
「その2)」へ続く〜。 |
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